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SoraJam Tokyo最優秀賞「TM2S」侘び寂びと季節をめぐる、五人五色の映像詩 – SoraJam Tokyo 2025


2025年3月25日、東京・広尾で開催されたOpenAI公式イベント「SoraJam Tokyo」。

AIを用いた映像制作をその場で行い、観客投票で最優秀賞を競うこのイベントには、プロから学生まで、さまざまなクリエイターが集結しました。

「俳句」という一見地味ながら奥深いテーマに、映像生成AI「Sora」を用いてどんなアプローチができるのか。参加者たちは4〜5名で即席チームを組み、企画から完成までをわずか2時間で走り抜けました。



そんな中、見事「最優秀賞」を受賞したのが、チーム「TM2S」。

初対面とは思えない連携と、日本の四季や詫び寂びの美学を繊細に描き出した映像詩で、会場を魅了しました。



五人五色のチーム「TM2S」

メンバー紹介(左から)

AiHub:たまちゃん

MASHTUNE:AIさん(X@mashtuneai

Takkaさん(X@takka_ver2) AI Visual Artists

デジタルハリウッド大学院:Emkoさん(X@Emkoai

長島志織さん(Instagram@_comimi_) デジタル庁×法令ハッカソン優秀賞


MASHTUNE:AIさんはProject Odyssey Community Award受賞!

AICUでも特集が組まれていますね



四季を映像に込めて

ここで今一度、歌詞と映像に注目してください。



春:「蝶の羽 音もたてずに 降りてきぬ」

Takkaさん担当です。

「ゆっくりと舞い降りる蝶の姿に春の静けさと命の始まりを重ね、スローモーションと和楽器の音で侘び寂びを表現しました。」


夏:「閑さや 岩にしみいる 蝉の声」

Emkoさん担当です。

「蝉の鳴き声の“しみ入る感覚”をどう出すかがポイント。音の存在感が季節を伝えてくれると思って、空間の“静”を大事にしました」


秋:「名月や 池をめぐりて 夜もすがら」

長島さん担当です。

「秋は、夏の昼とは対極的に、あえて夜の表現にしています。鈴虫の音によって、侘び寂びの世界観を演出。紅葉や水面、月明かりをAIで描くようなつもりで作りました」


冬:「木枯らしや 竹に隠れて しづまりぬ」

MASHTUNE:AIさん担当です。

「音がない=静けさではなく、“音を吸収している静けさ”を出したかった。冷たさと包み込むような優しさ、両方を意識しました」


春:「赤い椿 白い椿と 落ちにけり」

たまちゃん担当です。

「豊かに想像を膨らませて、『終わり』と、『季節の巡り』をテーマにしました。自分の思い描いた世界観で表現できるまでは、やりがいに感じる時間でした」


音楽:MASHTUNE:AI さん

「俳句の“間”を壊さないように、余白を活かすような音づくりを意識しました。AIに任せきりにせず、人のゆらぎを感じるサウンドにしたつもりです」


Emkoさんに話を聞いてみました。

Emkoさん:白井先生のデジハリのSlackチャンネルへの投稿を見て「面白そう!」と思い参加しました。AIそのものはDHGS(デジタルハリウッド大学大学院)に入ってから授業で学んで1年になります。Soraは初めて。チームで最初に企画を話し合い黙々各自のパートを作成しました。


俳句は季語があるので春夏秋冬を最初に思い付き、各自に季節を分けました。5人のチームだったので、最後に春に戻る構成にしました。SoraJam参加者が多様性であり、私たちは偶然日本人チームでしたので、インパクトを狙うのではなく、「侘び寂びの表現」を取り入れることにしました。季節を象徴する虫や植物を各季節に置きました。蝶、セミ、モミジ、竹林、椿。


私は夏を担当しました。夏のポイントは、俳句の通り静けさの中でセミの鳴き声が響く様子をカットを30秒の中で5カット入れて表現しました。途中セミが蛾になったりゴキブリっぽくなったり苦労しましたが、プロンプトに説明を補足して蝉を作りました。


今振り返ると優勝したのは、初めてあった人同士でしたがお互いをリスペクトできたこと、Soraは全員初めてでしたが動画のゴール設計をしたこと、得意分野で得手不得手を補強できたことかと思います!

短い時間で1つの動画を作るのは一貫性がなくなってしまったり一人に依存しがちですが、全員が力を発揮できましたのでとても達成感があります。勇気をもってイベントに参加したことで新しい世界が広がりました。


「AIを感じさせない映像をつくりたい」– Takkaさん

「これからは長編にも挑戦していきたい。“AIがつくった映像”ではなく、“心が動く映像”を目指したい。AIはあくまで道具で、感動を生み出すのは人の感性だと思っています」


なぜ参加したのか?

使わない日はないほど使用しているOpenAIオフィシャルイベントということで、すごく興味を持ったので参加しました。


イベントの流れ&感想

・自己紹介

・ビュッフェを堪能

・俳句選び

・動画の構想作成

・各自パートごとに動画を生成

・ある程度できてきた段階で

・動画編集と音楽生成を並行して全員でしっかり見る時間はなかったですが、サクッと見直して、完成。4回書き直しました笑


こだわりポイント

・俳句というテーマだったので、「侘び寂び」を表現したいということ。

・春夏秋冬+春という一年を通したテーマにしたいということ。

・音源だけでなく、季節に合った音響を入れたいということで、制作を完了しました。

・あと、チーム名であるTM2Sという全員の頭文字をとったチーム名も冒頭にかっこよく入れたいなと思い編集しました。



Soraや他AIツールを使った新しい発見

・普段あまり使い込んでいなかったSORAでしたが、かなり便利機能が搭載されていて今後自主制作や仕事の際にも使いたいなと思いました。


チーム制作で得た視点

・普段は個人で好き勝手に制作しているのですが、調和を取りながらも一つの作品にしていくことの難しさと全員で作る楽しさを両方感じた時間でした。

・1人だと、あるシーンにこだわって全体を見れなかったりすることもあるのですが、チームで分散して各パートを作ることで俯瞰的に全体を見ることもできてとても勉強になりました。

・また、時間がない中でも複数人で作ると一気に各パートの制作が進むところも醍醐味でした。


「俳句×映像」表現の面白さや難しさ

・そもそも、俳句自体がとても深い意味を持っていたりするので、どの部分をどう解釈して映像に落としこむか?

・さらに、どういう要素を切り取ることで映像として見応えのあるものに仕上げることができるのか?はかなり悩みました。

本当はもっと技術的にも凝った演出も加えたかったのですが、まずは時間内でしっかり作り切るというところを目指しました。


今後やってみたいこと

長編の映像を作りたい。また、あえてAIを使ったと言わない。AIを使ったと思われないようなエンタメとして楽しんでもらえる作品を作りたいなと思いました。


チーム名は、メンバーの頭文字(T、M、M、S、E)を組み合わせたもの。バックグラウンドも年齢もバラバラな5人が、「俳句×映像×AI」という難易度の高いテーマに果敢に挑みました。まずは「詫び寂び」を表現するために、5人で話し合い四季と季節を表す音が入っている一句を選びました。そして、春・夏・秋・冬、そして春の締めと、ストーリー性のある構成ができあがっていきます。担当が決まると、それぞれが責任を持ち、AIと向き合いながら最後までやり抜く。そんな自律的な制作スタイルが、短時間とは思えない完成度につながりました。


完成版を「本番で初めて観た」

実はこの作品、上映時がメンバー全員にとって“初見でした。

ギリギリまで映像と音を調整し、最終確認の時間すらないままエントリー。

つまり、スクリーンに映し出されたその瞬間、5人全員が初めて“完成形”を体験したのです。

「自分たちの作品に初めて出会う感覚」「会場で一緒に驚きと感動を味わった」——

その共有体験こそが、まさにこのチームにとっての“完成”だったのかもしれません。


編集後記:AIと感性の「共作」が拓く未来

即席の5人が、互いの感性を尊重しながら、五つの俳句と五つの季節を映像詩として結晶させたチーム「TM2S」。


「詫び寂び」という日本特有の美意識を、AIとともに映像で表現するその挑戦は、テクノロジーの力で人の感性がさらに深まる可能性を示してくれました。


SoraJam Tokyo 2025。そこに確かにあったのは、五人五色の詩情と、AIが引き出した“人の力”でした。


このような機会を作っていただいたOpenAI Soraコミュニティチームと、Machine Cinema社に感謝申し上げたいと思います。




Originally published at note.com/aicu on April 7, 2025.

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